スーパー戦隊が子どもと社会に残したもの「学び」と「共生」のメッセージ

キッズパーク豆知識

スーパー戦隊が子どもと社会に残したもの「学び」と「共生」のメッセージ

半世紀にわたって放送されたスーパー戦隊シリーズが、2026年2月に休止しました。
子ども向けの特撮番組として親しまれてきた戦隊は、娯楽だけでなく、仲間との協力や異なる価値観との向き合い方も伝えてきたのではないでしょうか。
(※2026年3月6日の朝日新聞の記事を参考にしています)

子どもが自分の可能性を広げられる物語

スーパー戦隊シリーズの最後の作品となった「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」は、2026年2月に最終回を迎えました。
長く続いてきた番組が一区切りを迎えたことに、寂しさを感じた人も少なくないでしょう。
アニメ特撮研究家の氷川竜介さんは、スーパー戦隊の大きな魅力について、子どもが想像の中で自分の力を広げられる点を挙げています。
現実の子どもは、大人と比べると体も小さく、一人でできることには限りがあります。
しかし、戦隊の世界では仲間と一緒に敵に立ち向かい、巨大なロボットまで動かします。
私自身も子どものころ、変身する場面やロボットが合体する場面を見て、自分も強くなったような気持ちになった記憶があります。
現実にはできないことでも、想像の中ではヒーローの一員になれることが、子どもにとって大きな楽しみだったのでしょう。
複数のロボットが合体して一つの大きな力になる場面は、単に迫力があるだけではありません。
一人では難しいことも、仲間と力を合わせれば乗り越えられるという考え方を、子どもにも分かりやすく示していたのだと思います。

色も性格も違う仲間がつくる小さな社会

戦隊のメンバーは、それぞれ色や性格、得意なことが異なります。
意見が合わずに衝突することがあっても、話し合い、役割を分担し、最後には同じ目的に向かって力を合わせます。
こうした物語を通じて、子どもたちは協力することや、違いを受け入れることを自然に見てきました。
女の子も含め、さまざまな人物が仲間として活躍する構成は、放送が始まった当時としては画期的だったとされています。
子どもにとって、家庭や保育園、幼稚園、学校は、初めて集団生活を経験する場所です。
自分とは違う考え方を持つ相手と、どう付き合えばよいのか迷うこともあるでしょう。
そのようなとき、個性の異なる仲間たちが協力する戦隊の姿は、一つの社会モデルになっていたのかもしれません。
いつも最初から仲良く団結しているわけではない点にも、現実に近いものを感じます。
最新作の「ナンバーワン戦隊」でも、初めから完全にまとまったチームではない戦隊が描かれました。
ぶつかり合いながら関係を築く姿は、現代の子どもたちにも伝わりやすいのではないでしょうか。

時代を映しながら受け継がれた共通の題材

スーパー戦隊シリーズは、未就学児から小学校低学年を主な対象として、毎年新しい作品を届けてきました。
視聴する子どもたちは毎年成長し、やがて次の世代へと入れ替わります。
そのため、制作側はその時代の子どもに届く人物像や物語を模索してきました。
一方で、恐竜や忍者、魔法といった人気の題材は、繰り返し使われています。
恐竜を題材にした作品だけでも、1992年の恐竜戦隊、2003年の爆竜戦隊、2013年の獣電戦隊、2019年の騎士竜戦隊があります。
同じような題材が何度も登場すると、マンネリに感じる人もいるかもしれません。
しかし、親が子どものころに見た恐竜の戦隊を、今度は自分の子どもが別の作品として楽しむこともできます。
世代が違っても「自分も戦隊を見ていた」と話せることは、長寿シリーズならではの魅力です。
作品をきっかけに、親子や世代の異なる人同士で会話が生まれることもあります。
繰り返される題材は、単なる使い回しではなく、世代をつなぐ共通言語としての役割も果たしていたのでしょう。

特撮が伝えてきた共存と現実の複雑さ

政治学者の秦正樹さんは、子どものころに見た戦隊作品が、政治に関心を持つ原点になったと語っています。
秦さんが高く評価しているのが、1993年に放送された「五星戦隊ダイレンジャー」です。
作品では、人類を支配しようとするゴーマ族に対抗するため、ダイ族の道士である嘉挧がダイレンジャーを組織します。
しかし、嘉挧自身も、もともとはゴーマ族でした。
さらにゴーマ族の内部にも、人間への接し方を巡って異なる考えを持つ勢力が存在していました。
単純に正義と悪を分けるのではなく、一つの集団の中にも意見の違いや対立があることを描いていたのです。
最終的にも、隠された真の敵を完全に倒して終わるのではなく、光と闇が共存する道を考えさせる内容だったといいます。
子ども向け番組と聞くと、善い人が悪い人を倒す分かりやすい物語を想像しがちです。
しかし実際の戦隊作品には、大人になってから見返すことで気付く複雑なテーマも含まれていました。
異なる価値観を持つ人たちが、同じ社会の中でどのように暮らしていくのかという問いは、今の社会にも通じています。
秦さんは世論調査の中で視聴経験のある特撮番組を尋ねており、政治への関心度が比較的高い人は、「仮面ライダー龍騎」など特定の作品を挙げる傾向があるとしています。
まだ研究論文にはなっていませんが、幼いころに見た作品が、大人になってからの考え方に影響する可能性は興味深いものです。
戦隊シリーズは、俳優や撮影技術を育てる場でもありました。
生身の俳優やスーツ、ミニチュアを使った表現には、人が体を動かすからこその迫力があります。
生成AIが広がる時代であっても、人が演じる特撮の価値は簡単には失われないでしょう。

スーパー戦隊シリーズが残したものは、ヒーローやロボットの格好良さだけではありません。
仲間と協力すること、違いを認めること、簡単には答えが出ない問題を考えることも、物語を通じて子どもたちに伝えてきました。
戦隊に代わって、これからの子どもたちにどのような作品が届けられるのか、新しい挑戦にも注目したいです。