違いを「強み」に変える社会へ-子どもの可能性と支援
キッズパーク豆知識
2026.10.02
読み書きが苦手でも、別の方法なら力を発揮できる子どもがいます。
ドローンパイロットとして活躍する高梨智樹さんの歩みから見えてくるのは、本人の努力だけではなく、その子に合った学び方や周囲との対話を用意する大切さです。(※2026年5月31日の朝日新聞の記事を参考にしています)
目次
「できない」のではなく方法が合っていなかった
高梨さんは幼少期から周期性嘔吐症があり、小学校にはほとんど登校できませんでした。
中学3年生で、読み書きが困難な学習障害(LD)と診断されています。
紙では内容が頭に入りにくい一方、パソコンなら知識を吸収でき、高校では教科書やプリントをデータで受け取り、音声読み上げを活用しました。
ノートや課題はパソコンで入力し、試験では代読や時間延長を利用しています。
子育てをしていると、できないことに目が向いて「もっと頑張れば」と考えてしまうことがあります。
しかし、努力の量ではなく、方法がその子に合っているかを考える視点も必要なのだと気づかされます。
自分に合った方法が将来の仕事につながった
高梨さんがパソコンを使い始めたのは小学校1年生の頃でした。
その後、父親が買ってくれた無線操縦のヘリコプターをきっかけにドローンへ興味を持ち、自作するようになります。
高校時代には国内のドローンレースで優勝し、ドバイの世界大会へ日本代表として出場しました。
卒業前には父親と撮影会社「スカイジョブ」を設立し、現在は映像作品の撮影などで活躍しています。
送られてくる台本などはパソコンやタブレットで2~5倍速で聞いて確認しています。
苦手を克服して周囲と同じ方法に合わせるのではなく、得意な方法を使い続けたことが仕事にも生かされている点が印象的です。
出会いと対話が自己肯定感を変える
高梨さんの転機となったのが「DO-IT Japan」でした。
障害や病気のある子どもや若者から将来の社会的リーダーを育て、インクルーシブな社会を目指すプロジェクトです。
高校1年生の夏季プログラムでは、人工呼吸器を使用する人や発話が難しい人など、さまざまな仲間と出会いました。
それぞれが自分の方法で進学や将来について考え、積極的に意見を交わす姿に刺激を受けたといいます。
高梨さん自身も「自分の方法とペースで学べばいい」と考えられるようになりました。
子どもにとって、自分を理解してくれる大人だけでなく、多様な生き方をする仲間との出会いも大きな力になるのだと思います。
ベビーシッターや保育に携わる人にとっても、子どもの苦手な部分だけで判断せず、「どんな方法ならできるのか」を一緒に探すコミュニケーションは大切ではないでしょうか。
合理的配慮は「対話」から考える
DO-ITのディレクターで東京大学先端科学技術研究センター教授の近藤武夫さんは、合理的配慮が広がる一方、形だけの配慮になり、本人と周囲が本当に必要なことを考える対話が十分に育っていないと指摘しています。
高梨さんも社会に出てから、読み書きの障害を説明しても理解されにくい経験をしています。
見た目では分からない困難だからこそ、本人の話を聞くことが欠かせないのでしょう。
インクルーシブ保育でも、最初から「この子にはこの対応」と決めつけるのではなく、本人や家族と話しながら方法を探すことが重要だと感じます。
褒めるときにも結果だけを見るのではなく、その子なりの工夫や挑戦に目を向けられたら素敵です。
子どもの可能性を周囲が狭めないために
高梨さんは、DO-ITとの出会いによって劣等感が自己肯定感へ変わったと振り返っています。
「できないこと」があっても、それだけで将来の可能性が決まるわけではありません。
教育や子育てに関わる大人が、その子に合う道具や学び方を一緒に探し、必要な支援について話し合える環境が重要です。
シッターを目指す人にとっても、食事や寝かしつけ、遊びといった日常のお世話だけでなく、子どもそれぞれの違いを理解しようとする姿勢は大切な視点でしょう。
子どもを周囲の「普通」に合わせるだけではなく、一人ひとりが自分らしい方法で成長できる社会になってほしいと思います。