大切な「初期の対話」保護者対応に追われる職員
子育てノウハウ
2026.05.08
保護者対応による負担が原因で、休職や退職に至る教員が増えているといわれています。
こうした状況を受け、学校外に保護者対応の専用窓口を設置する取り組みが徐々に広がっています。
子どもを中心に据えたとき、保護者と学校はどのように意思疎通を図るべきなのでしょうか。
いじめや不登校などの課題に対し、全国で子ども支援や相談に関する研修を行っている立命館大学の名誉教授・野田正人氏に話を伺いました。
(※2025年12月3日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
目次
校外相談窓口の拡大し学校・保護者の新たな関係性を築く取り組み
校外に保護者対応の相談窓口を設ける動きが広がっています。
これは、現場の負担増に対するやむを得ない対応といえるでしょう。
かつては、家庭と協力しながら子どもを育てていくという考え方が教員の間に根付いていましたが、近年はその意識にも変化が見られます。
また、保護者が教員を「指導者」として尊重する風土も、以前ほど一般的ではなくなってきました。
海外では「ホバリングペアレント」という言葉があり、ヘリコプターのように常に子どもを見守り、必要とあればすぐに介入する保護者像を指します。
もちろん、子どもを守ることは保護者にとって重要な役割であり、その声には大きな意味があります。
しかし、学校と保護者の間に不信感が生まれ、関係がこじれてしまうと、教員の負担が増すだけでなく、結果として子どもにも悪影響が及ぶ可能性があります。
では、校外に相談窓口を設置する際に意識すべき点は何でしょうか。
働き方改革の本来の目的は、単に教員の負担を軽減することではありません。
教員が余裕を持って子どもと向き合い、その成長を支えられる環境を整えることにあります。
2022年に改訂された生徒指導に関する指針でも、教員と保護者が協力して子どもを支えていく重要性が明確に示されています。
外部窓口に求められる本質的な役割と、初期対応の重要性
外部に相談窓口を設けたとしても、企業のクレーム対応やカスタマーハラスメント対策のように、単に「対応が難しい保護者」を抑えるだけで問題が解決するわけではありません。
その背景には必ず子どもの存在があります。
保護者からの訴えがあった際には、子どもの状況や特性を丁寧に把握することに加え、これまでの成長過程や家庭環境、クラスの雰囲気、友人関係なども含めて総合的に捉え、適切な支援策を検討することが重要です。
必要に応じて福祉分野や医療機関と連携し、教員と専門職が一体となって支援できる体制を構築することが求められます。
また、保護者が学校に対して意見を伝える仕組みについて相談されることも少なくありません。
その際に重要となるのが、教育委員会や外部機関へ話が進む前の初期対応です。
問題が大きくなるケースの多くは、初動の見落としや不適切な言動によって関係が悪化し、結果として深刻化したものです。
担任が単独で長期間抱え込んでしまうケースや、事務的で配慮に欠ける対応がトラブルを招くことも現実に起きています。
教員研修の場でも強調されているのは、保護者の訴えの背景にある意図を丁寧に読み取り、「なぜそのような状況になっているのか」と子どもを中心に据えて理解しようとする姿勢です。
最初に「大変でしたね」といった共感の言葉をかけ、保護者もまた困難を抱えている存在であると認識して対話を進めることで、多くの問題は円滑な解決へとつながります。
各校のスクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)と情報を共有し、きちんと話し合えば、アセスメント態勢が取れます。
各校1人ずつ常駐するのが理想なのですが、現状はなかなか難しいようです。
子どもの声を起点にした支援体制が必要
滋賀県では、2025年10月から「子どもの権利委員会」が発足し、野田正人氏はその委員長も務めています。
この委員会は、子どもや保護者がどのような内容でも安心して相談できる仕組みです。
学校や教育委員会に加え、このような第三者的な窓口が各地域に広がっていくことが望まれます。
保護者から寄せられる相談の中には、見過ごせない深刻な問題が含まれている場合もあります。
子どもや家庭のあり方が多様化している今、単純に「クレーム」として処理するのではなく、子どもを中心に据えて丁寧に対話を重ね、状況を多角的に把握することが重要です。
その上で、関係者が連携しながら包括的に支援していく体制が求められます。
このような取り組みは、教員の資質向上や学校全体の改善につながるだけでなく、何より子どもたちのより良い未来を支える基盤となります。