これからのインクルーシブ教育-海外ル-ツの子ども達
キッズパーク豆知識
2026.03.27
近年、日本の公立学校では海外にルーツを持つ子どもの在籍数が増加しています。
このような状況の中で、学校や教員はどのような支援や対応を行うことが求められるのでしょうか。
外国につながりのある子どもの教育を専門とする広島大学の南浦涼介准教授に話を伺いました。
(※2025年11月4日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
目次
求められる学校の連携と視点とは
言語面の課題を抱える子どももいる中で、学校現場ではどのように対応すべきか悩む教員が少なくありません。
近年、日本語指導に関する制度は以前に比べて大きく整備されてきています。
支援が必要な児童生徒が多い場合には専門の教員が配置される仕組みが進み、小学校・中学校・高校においても特別の教育課程を編成し、日本語の個別指導を行うことが可能になっています。
しかし現場では、日本語が十分に理解できない児童生徒への対応が、「誰が日本語指導を担当するのか」という人員配置の問題として捉えられがちです。
本来は教育内容や指導方法を検討すべき課題であるにもかかわらず、体制の有無に議論が偏ってしまう傾向があります。
特に、指導経験の蓄積が少ない自治体や専門人材が不足している地域では、支援担当者を確保できないために具体的な対応が進まないという状況も見られます。
その結果、「どのように教えるか」ではなく、「支援体制をどう整えるか」という議論に終始してしまうことも課題の一つです。
さらに2000年代以降、学校は学力や能力の向上を重視する場としての性格を強めてきました。
学力形成が最優先とされる環境の中では、その枠組みにうまく適応できない子どもが取り残されてしまう可能性もあります。
日本語指導の制度は、特別支援教育と比べると十分に整備されているとは言えない側面があります。
そのため、教える側には「言語力と学力の双方をどのように伸ばすか」という強い焦りが生じやすく、現場の負担感につながっていると考えられます。
特別な指導より大切なのは日常の関わりと成長の共有
教員が対応することはやはり難しいのでしょうか。
教員養成の過程において、日本語を十分に話せない子どもが教室にいる可能性を具体的に想定して学んでいない場合もあります。
そのため、「指導には特別な専門技術が必要なのではないか」と過度に構えてしまうことがあります。
しかし実際には、必ずしも高度で特殊なノウハウが求められるわけではありません。
日頃の授業場面を思い浮かべてみると分かりやすいでしょう。
例えば社会科の授業で古墳の絵を見せ、気づいたことを尋ねた際に、子どもが「偉い人が見ている」と表現したとします。
このとき、「王」や「豪族」という専門的な語を使っていないからといって誤りと決めつける必要はありません。
「偉い人は、かっこよく言うと王や豪族とも言うんだよ」と補足することで、子どもの表現を尊重しながら言葉を広げていくことができます。
必ずしも特定の語彙を強制するのではなく、子どもの発言に価値を見いだし、別の言い方を提示する関わりは、教員が日常の授業で自然に行っている実践です。
ただし、日本語指導の場面では「言語力を早く伸ばさなければならない」という意識が強くなりやすく、こうした基本的な視点が抜け落ちてしまうことがあります。
さらに、日本語指導担当の教員は担任とは異なり、週に数回など限られた時間で関わることが多く、短期間で成果を求められるというプレッシャーを感じやすい状況にもあります。
重要なのは、日本語指導を担当する教員と、児童生徒が在籍する学級の担任が連携し、「どのような成長を、何の目的で大切にするのか」という共通理解を持つことです。
周囲の子どもと同じ日本語の授業についていくことや、テストの点数だけを重視することが、その子にとって最優先とは限りません。
本来は、個々の伸びや変化を丁寧に見取ることが重要です。
しかし現場では、他の子どもとの比較や評価の説明を意識するあまり、成績基準に当てはめて考えてしまう傾向も見られます。
実際には、教員が行うべき支援は日常の教育実践の延長線上にあるものであり、特別に大きく異なるものではありません。
将来的な進路選択や高校入試の場面においても、その子が積み重ねてきた学びや努力が適切に評価されていくことが望まれます。
日本語力だけで判断しないで!継続的な支援は重要
日本語指導の方法以外にも課題はあるのでしょうか。
現場では、同じ外国にルーツを持つ子どもであっても、日本語指導の対象かどうかによって、支援の必要性が判断されてしまう傾向があるように感じられます。
日本語がある程度理解できるようになると、制度上の支援対象から外れやすくなり、結果として必要な支援が途切れてしまうケースも見受けられます。
本来は、日本語の習得状況にかかわらず、継続した関わりが求められます。支援の充実という観点では、人員配置の多さだけでなく、関係する教職員同士が子どもの成長をどのように捉えるかという視点の質や、その認識の共有が大きな意味を持ちます。
また、多様な言語的背景や文化を持つ子どもたちが共に学ぶ環境を整えることも重要です。誰もが安心して学び合える教室づくりを進めることが、結果として個々の成長を支える基盤になるといえます。