あなたは大丈夫?「カーリングペアレント」先回りして子どもを誘導
子育てノウハウ
2026.03.20
近年、子育てに関する話題の中で「カーリングペアレント」という言葉を見聞きする機会が増えています。
これは冬季スポーツのカーリングに由来する表現です。
では、この言葉はどのような保護者像を示し、どのような社会的背景のもとで生まれたのでしょうか。
2017年に日本のウェブサイト上でこの概念を紹介した、公認心理師の佐藤めぐみさん(56)に話を伺いました。
(※2025年10月27日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
目次
「先回り子育て」の実態と背景にあるママパパの不安心理
「カーリングペアレント」とは、子どもの進む道をあらかじめ整え、望ましい方向へ導こうとする保護者像を表す言葉です。
カーリングという冬のスポーツでは、ブラシで氷の表面をこすり、ストーンが滑りやすくなるよう調整します。
この動きになぞらえ、親が環境を整え、子どもが望ましい結果にたどり着くよう先回りして支援する様子を指しています。
この表現は、調査によると2004年にデンマークの心理学者によって初めて用いられたとされています。
日本では2010年代後半に、パメラ・ドラッカーマン氏による「カーリングペアレントと小さな皇帝」という記事を通じて知られるようになりました。
一見すると「過保護」と似ている印象を受けますが、両者には違いがあります。
過保護が主に子どもを甘やかす関わり方を指すのに対し、カーリングペアレントは子どもの進路や結果を見据え、環境そのものを調整しながら誘導する傾向が強い点が特徴です。
いわば、過保護に加えて過干渉や過度な管理が組み合わさった関わり方といえます。
では、なぜこのような養育姿勢が生まれるのでしょうか。
背景にはいくつかの要因が考えられます。
まず、日本の保護者には将来を心配し、先に対策を講じようとする傾向が見られます。
次に、育児に関する情報があふれている現代では、不安を刺激されやすく、子どもへの関与が過剰になりやすい環境があります。
さらに、子どもの成果や姿が親自身の評価に結びつきやすい社会的風潮も影響しています。
親としての評価を意識するあまり、失敗を避けさせようと強く介入してしまうのです。
また、親が先に手を出した方が効率的だと感じることや、理想の子ども像を無意識に求めてしまう心理も要因の一つです。
こうした積み重なった不安や期待が、子どもが理想から外れることへの恐れとなり、結果として進む道を整えようとする行動につながっていきます。
子どもには「失敗する機会」こそ大切
子どもの経験を尊重し、成長の過程を見守る姿勢の重要性が改めて注目されています。
例えば、女性1人が生涯に出産すると見込まれる子どもの数を示す合計特殊出生率は、日本では2024年に1.15、欧州連合(EU)では2023年に1.38となっています。
少子化が進む社会では、1人の子どもに寄せられる期待が高まりやすく、子育ての実体験に触れる機会が減っていることも影響していると考えられます。
そのような背景の中で、現代の保護者は子どもとの関わり方に迷いを感じやすくなっています。
日本では2020年に体罰の禁止を中心とした改正児童虐待防止法が施行されましたが、欧州では1980年代頃から同様の流れが広がり、カーリングペアレントという言葉の発祥とされるデンマークでは1997年に全面禁止が実現しています。
子どもを恐怖で動かしてはならない、意思を尊重すべきであるという価値観が社会に浸透する一方で、その解釈が極端になり、必要以上に子どもの意思を優先してしまうケースも見受けられます。
本来、子どもが感じる不快感や痛み、いらだちといった感情は特別に避けるべきものではなく、人生の中で自然に経験していくものです。
これらは善悪で分けられるものではなく、成長に伴って誰もが向き合う大切な感覚です。
過度に先回りして環境を整えすぎる関わり方は、子どもが自ら体験する機会を減らしてしまう可能性があります。
子どもには試行錯誤し、失敗を通して学ぶ権利があるという視点が重要です。
もちろん、年齢や発達段階に応じた支援は必要です。
例えば、幼児期には通園の準備を保護者が行うのが一般的ですが、成長しても同じようにすべてを親が担い続けると、自立の機会を奪ってしまいます。
子育てとは、子どもの成長に寄り添いながら少しずつ手を離していく過程であり、子どもが自分とは別の人格を持つ存在であると認識することが大きな分岐点になるのです。