子どもが不登校、仕事が続けられるような特別休業制度の拡充
子育てノウハウ
2025.07.04
お子さんが学校へ行かなくなったとき、親は仕事を続けるべきか、それとも辞めるべきかという選択に悩むことがあります。
これまでに約2,000人の保護者の相談を受けてきた専門の相談員は、「まずは一時的な対応を試してみるのがよい」と助言しています。
また、最近では従業員の事情に寄り添い、特別な休業制度を導入して支援する企業も増えてきました。
(※2025年3月11日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
目次
無理に結論を急がないで。子どもの不登校と向き合うためにできることとは
有給休暇や短時間勤務を活用して、まずはお子さまと一緒に過ごしながら様子を見守るという方法もあります。
企業の中には、社員の状況に応じて独自の休業制度を設け、柔軟に対応しているところもあります。
「すぐに退職を決める必要はないと思います」と語るのは、個別指導塾「キズキ共育塾」(本部:東京)の専任相談員・半村進さんです。
これまでに約2,000人の保護者の相談に応じてきた半村さんは、不登校は親子にとって未経験の状況であり、冷静な判断が難しいと感じています。
「心が不安定なときに下した決断は、あとで振り返ると極端だったと気づくことが多い」と半村さんは指摘しています。
退職を考える前に段階的なサポートを
お子さまの不登校をきっかけに退職を検討する保護者の方に対して、段階を踏んだ対応を提案する専門家がいます。
ステップ(1):まずは2~3日の有給休暇を取得
お子さまが親と過ごすことを望んでいるかは、実際に一緒にいてみないと分かりません。
そこで、短期間の休暇を取ってみて、子どもの様子――安心しているか、笑顔が増えたかなど――を観察します。
ステップ(2):週1回の有休または時短勤務に切り替える
次の段階として、週に1回の有給取得や短時間勤務を試してみます。
職場によっては介護休業制度の利用が可能な場合もありますので、勤務先に相談することが大切です。
「親の健康が子どもを支える」無理のない選択をするためには
相談員の半村さんは、親自身の心と体の健康を守ることが、結果的に子どもの支えにもなると話しています。
「もし突然退職してしまうと、子どもは『自分のせいで仕事を辞めさせてしまった』と感じてしまうかもしれません。実際には、仕事を続けることで親が心身のバランスを保ちやすくなり、それが子どもに良い影響を与えることもあります」
と半村さんは語ります。
「親が無理をせず、元気でいることこそが、子どもにとって最も大切な支えだと私は思います」とも述べています。
子育てや不妊治療にも対応。企業が導入した新しい休業制度
従業員の家庭事情に配慮し、支援を始める企業が登場しています。
東京都文京区に本社を置く共同印刷は、2023年1月より「ライフサポート休業制度」を導入しました。
この制度では、子どもの不登校や不妊治療を理由とした休業を最長2年間、短時間勤務は最長3年間まで利用することが可能です。
この制度を企画した人事企画課の臼井さや香担当課長は、「コロナ禍以降、身近にも悩む保護者の声を多く聞くようになりました」と話しています。
社内でのアンケートや聞き取りを重ね、約半年という短期間で制度を整えました。
育児休業は原則として子どもが1歳まで(最長2歳)とされており、多くの支援は子どもが小さい時期に集中しています。
しかし、臼井課長は「調べたところ、妊娠前の段階や、小学4年生以降の時期に対応した支援制度はほとんど存在していませんでした。
子育ては続いているのに、その年齢以降は支援が途切れてしまうのです」と語ります。
最後の支えとなる制度を。セーフティーネット」としての企業の取り組み
時差出勤やテレワークといった既存の制度では対応しきれない状況に直面した場合、共同印刷では「ライフサポート休業制度」の活用を促しています。
この制度は、社員が困難な状況に直面したときに活用できる、いわば最後の砦としての役割を果たしています。
人事企画課の小松英司・課長代理は、「お子さんの不登校をきっかけに退職を考える社員から相談を受けることがあります。そのような場合でも、何とか仕事を続けられる方法を一緒に考えるようにしています」と語っています。
今後は、社内でこの制度の存在をより多くの社員に知ってもらうことが課題だといいます。