何歳から?持たせるべき?悩ましい「子どもとスマホ」事情
キッズパーク豆知識
2024.09.20
子どもにスマホを持たせるべきかどうか。持たせるなら何歳からが適切なのか、と悩む親は多いです。この春、子どもが小学校3年生に進級し、放課後の学童や習い事に一人で通うようになりました。何かあったときのために専用のスマホを購入しました。当初はキッズ携帯にする予定でしたが、量販店のキャンペーンに影響されました。
視力が落ちないか、使いすぎていないかといった悩みは尽きません。一度手に入れてしまったら、持たない生活には戻れないこの便利なツール。子どもを取り巻くリスクに対して行政や保護者はどう向き合うべきか。このようなテーマについて、こども家庭庁で議論が続いています。「青少年インターネット環境の整備等に関する検討会」のメンバーである、京都大学の曽我部真裕教授(憲法)に話を伺いました。
(※2024年6月11日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
目次
今や生活と切り離せない!子どもとインターネット
子どものインターネット利用について、こんなデータがある。青少年のインターネット利用環境実態調査(2024年こども家庭庁公表)によると、子どもたちのネットの利用時間は、2歳で1日平均約1時間50分。年齢とともに増加し、10歳で約3時間半、17歳は約6時間20分に上る。低年齢化と長時間化がトレンドだ。
ネットを使う機器として最も多いのはスマホ(74.3%)。このうち、10歳以上になると、親との併用より子ども専用の割合が高くなる。
ゲームや動画を含め、もはやネットは子どもたちの生活と、切っても切り離せない存在になっている。政府の対策は、いかに子どもを遠ざけるかではなく、「賢く使う」ことが前提だ。
しかし、子どもが脅されて自分の裸体を撮影して送信させられる犯罪被害、SNSによるいじめ、誹謗(ひぼう)中傷などが社会問題化している。
子どものインターネット利用に対する政府の対策とその課題
どのような対策があるのでしょうか。政府の対策方針は、技術的な手段と教育的手段の二つです。技術的な手段の柱はフィルタリング機能で、有害サイトへのアクセスを制限したり、アプリの使用を制限したりするものです。
青少年インターネット環境整備法が改正され、2018年から携帯電話事業者や代理店にはフィルタリングを有効に設定する義務が課されるようになりました。こども家庭庁の資料によれば、フィルタリング加入率は現在約7割です。
しかし、実際に利用する立場からすると、フィルタリングは非常にわかりにくいです。契約時にサインした程度の認識しかなく、子どものスマホでLINEが使えず初めてフィルタリングに気付くことが多いです。カスタマイズすればLINEは使えるようになりますが、これらはアプリの使用制限となります。
一方で、携帯電話事業者に課されているのは、インターネットで有害なサイトを閲覧できないようにするフィルタリングです。いずれにしても、設定が複雑で解除という抜け道もあり、「これで一安心」とはなかなか思えないのが現状です。
子どものインターネット利用に関する政府の対策とその課題
政府の対策は十分なのでしょうか。京都大学の曽我部教授にお話を伺いました。
曽我部教授が特に指摘したのは、SNSによるメンタルヘルスへの影響に対する対策の必要性です。スタイルの良いモデルの画像ばかりを見て摂食障害になるケースが海外では問題になっていますが、「自傷行為の画像ばかりを見て、メンタルの問題が悪化するケースもあります。海外ではそうした画像は検索しても出てきませんが、日本では出てきてしまいます。SNS上の投稿はフィルタリングでは対応できず、SNS事業者の自主規制任せになっています」と言います。
法律でフィルタリングの義務が課せられるのは携帯電話事業者ですが、ガラケーではなくスマホが主流となった今、それでは限界があります。アップルやグーグルなどのOS事業者、あるいはSNS事業者の取り組みや、それに対する規制が問われています。
子どもの権利とスマホ利用に関する曽我部教授の見解
子どもの権利は、大人のそれとはどう違うのでしょうか。スマホを使う自由という観点から、曽我部教授に素朴な質問を尋ねました。
「極端な言い方をすれば、大人は自己責任。子どもは同じ権利があるけれども、すべてが自己責任ということではなく、保護を受けるため、制限される場合がある。権利と保護のバランスということになります」と教授は述べています。
SNSの誹謗中傷、メンタルヘルス、いじめ、犯罪など様々なリスクは大人にも生じますが、子どもの場合は最終的には保護者が守ることになります。ただ、親任せでよいのかという不安もあります。香川県では、子どものゲームの使用時間を決め、保護者に守らせる努力義務を課す条例があります。高校生(当時)らがゲーム時間を決める自由の侵害だとして違憲訴訟を起こしました。
曽我部教授はこれらの条例を例に挙げ、「公権力が家庭内のことにどこまで口を出すのかという問題があります。子どもには個性があり、それに向き合えるのは親や教師です。行政はあくまで支援や、必要最小限の規制ということになります」と語りました。
子どものスマホ利用に対する親の責任と向き合い方
我が身を振り返った方もいるのではないでしょうか。リスクがあるとわかっていながら、スマホを買い与えたのは親である自分です。それなのに、フィルタリングがややこしいだとか、抜け道が多くて安心できないだとか、行政や事業者に任せていた面がなかったでしょうか。
子どもにも権利があります。地図を使いこなし、絵を描き、音楽を聴き、動画を楽しむ。アプリを使いこなす姿に驚かされることも多いでしょう。フィルタリングはあくまで手段にすぎません。スクリーンの向こうの大海へと漕ぎ出そうとする子どもに、どんな波よけが必要なのか。成長を見ながら、一緒に向き合っていくしかありません。