「全部食べさせなきゃ」からは脱却しよう!将来会食恐怖症にさせないために

子育てノウハウ

給食を残さずに食べることを強要する「完食指導」は、子どもの心に傷を残し、大人になった後も食行動に影響を及ぼすことがあります。人前で食事をする際に不安や恐怖を感じる「会食恐怖症」の方々の相談に応じたり、教員への講演を行っている山口健太様にお話を伺いました。
(※2024年3月19日(火)・21日(木)朝日新聞朝刊の記事を参考に要約しています。)

会食恐怖症についての理解

杏林大学名誉教授である医学博士の田島氏(精神医学)によりますと、会食恐怖症は、家族以外の人々と外で食事する際に不安を感じ、その結果、友人関係や恋愛、仕事に影響が出る状態が半年以上持続するもので、社交不安症の一種とされています。会食の場面やその想像によって吐き気やめまいが生じることや、手足の震えといった様々な症状が現れます。

日本会食恐怖症克服支援協会・山口健太さんの体験談

高校時代の食事に関するプレッシャーが、食事をとる際の不安を引き起こしました。特に野球部の合宿で課された大量の食事ノルマに対して完食できず、食前に嘔吐するようになりました。岩手県から外の大学に進学したことで、友人を増やすために社交の場に積極的に参加し、日本料理店でのアルバイトを通じて、無理せず食べられる環境が整いました。これらの経験から「無理しなくてもよい」との理解を得て、自信を取り戻すことができました。

山口さんが日本会食恐怖症克服支援協会を立ち上げたきっかけとは

22歳のときに経験をブログで発信し始めたことで、会食恐怖症に苦しむ人々の存在を知りました。その後、大阪や福岡で情報交換会を開催し、多くの感謝を受けました。これがきっかけで、2017年に「日本会食恐怖症克服支援協会」を設立しました。教育現場での給食の問題にも注目し、全国の栄養士や保育士に対して講演を行い、「食べられない子」に寄り添うことの重要性を伝えています。食事の場における心理的安全性の確保が必要であることを訴えています。

保育施設における食事問題と改善策

昨年、保育施設で子どもたちに対して食べ物を強制的に口に押し込む、長時間食べさせ続けるといった不適切な行為が相次いで発覚しました。これを防ぐためには、保育の現場で職員間で自由に話し合える風土の構築が重要であると玉川大学の大豆生田啓友教授(保育学)は指摘しています。教授は、開かれたコミュニケーションが不適切な保育の防止には不可欠だと述べています。

不適切保育の背景とその解決策

保育施設における不適切な保育行動は、保育士の過大な業務負担や園の保育観に根ざしています。特に、「全員が同じ行動をしなければならない」という管理的な考え方や、厳格なしつけが問題を深刻化させています。食事に関する過度な価値観や、厳しい食事の強制は、子どもたちの多様性と自由を制限しています。保育士は個々の子どもの特性に応じた対応が重要であると認識していますが、パターン化した行動や園内のヒエラルキーにより、その実践が困難になっています。保育の質を高めるには、子ども一人一人の状況を日々記録し、振り返りながら対話を行うことが必要です。また、園長や主任による積極的な現状問題の再考と、職場の風土改革が求められています。これにより、子どもたちが主体的に生活し、安心して成長できる環境が整うことが望まれます。

保育園の質を向上させるリスペクト型マネジメント

保育園においては、子ども一人一人が大切にされている環境が人間関係の向上に寄与し、食事への関心を高めています。保育園の食事指導がしつけに偏りすぎると、子どもも先生も苦しくなることが問題視されています。保育士の配置基準の見直しは進行中ですが、それだけでは不十分であり、日々の保育の質も重視する必要があります。良い園では、保育士同士が相互にリスペクトし合う文化が育まれ、限られた人員でも質の高い保育を実現しています。このような「リスペクト型マネジメント」の導入が、園全体の質向上の鍵とされています。