詰め込まないで!早期幼児教育に警鐘を鳴らす
子育てノウハウ
2024.05.24
早期幼児教育に熱を上げる保護者とその子どもの心身の健康とのミスマッチ。あなたは思い当たるフシはありませんか?警鐘を鳴らす専門家もいます。ここで改めて早期幼児教育について考えてみましょう。
(※2024年3月5~7日 朝日新聞朝刊のシリーズ記事を参考に要約しています。)
目次
親の時間投資が子どもの成長に与える影響
近年、教育経済学の領域では、親の「時間投資」に関する研究が進行中です。この研究は、親が幼少期の子どもにどのように時間を費やしたかと、それが子どもの成長にどのような影響を与えたかを調査します。同時に、親の学歴や収入による格差も考慮されています。この件について、慶応大学の中室牧子教授に取材しました。
幼少期の時間投資が認知能力に与える影響
幼少期の子どもに対する時間投資が認知能力に大きな影響を与えることが、英国や他の国で行われた研究で示されています。子どもが成長するにつれて、自ら時間の使い方を決める時間が増え、親との共同意思決定時間が減少します。このため、幼少期に親とともに時間を過ごすことが、子どもの成長にとって重要であると言えます。
子どもの能力向上に質の高い時間を提供する方法
米国の研究によると、子どもの能力向上には「質」の高い時間が重要であることが示されています。この質は、親子の間での適度な会話や交流、そして子どもを中心とした活動によって測定されます。例えば、食事をしながら会話をすることは質の高い時間に分類されますが、単にテレビを見ているだけでは質の高い時間にはなりません。したがって、子どもの能力向上を促すには、質の高い時間を提供することが重要です。
親の心構えの重要性
研究によれば、親の学歴が高いほど子どもへの時間投資が長くなる傾向があります。また、外で働いているかどうかは時間投資に大きな影響を与えないことが意外な結果として示されています。日本のデータでも、学歴の高い親ほど子どもへの時間投資が積極的であり、親の考え方によって格差が存在することが明らかになっています。このことから、親の心構えが子育てにおいて重要であると言えます。
「体験格差」に関するプロジェクトの提起
新型コロナウイルスの影響で学校行事などが中止される中、家庭における体験格差が広がる可能性があることを考慮し、「体験格差」に関するプロジェクトが始動しています。このプロジェクトでは、家庭の経済状況に関係なく、子どもたちに多様な体験を提供することが目標とされており、2024年までに経済困窮世帯の子ども1,000人に野外体験などを実施する予定です。親の時間投資や子どもの体験の有無が子どもの能力に影響を与えることを、大人たちにも認識してもらいたいという意図があります。
子どもの習い事と親の関わり方
お茶の水女子大学の内田伸子名誉教授(発達心理学)によると、子どもの習い事が親の悩みの種になっていることがあります。内田教授は子どもの主体性を尊重し、子どもが嫌がる時は「やめる勇気を持つ」ことを重視しています。親は子どもにどんな環境を提供すれば良いか考える必要があります。
子育ての賢明なアプローチと教育方針
親が子どもの将来に向けて早期教育の必要性を感じるかどうかは個々の考え方により異なります。しかし、子どもの将来を左右するのは幼少期の教育だけではないと言えます。子どもが自ら興味を持ち、自分の可能性を発揮できるよう、多様な経験を積ませることが重要です。
例えば、ピアノなどの習い事は将来的な才能の発展につながるかもしれませんが、それを無理強いすることは避けるべきです。親の期待や欲望によって子どもを縛ることは、教育虐待につながります。子どもが習い事を嫌がる場合は、その意思を尊重し、強要するのではなく、やめる勇気を持つことが大切です。子どもが楽しむことから生まれる意欲や探究心が、真の成長を促すのです。
英語教育に関しても、早期からの取り組みが必ずしも効果的とは限りません。第二言語の学習においては、母語の基盤を築いた後に行うことが重要です。また、言語力だけでなく、コミュニケーション能力や読解力も育てる必要があります。
さらに、子どもの可能性を広げるためには、親子で楽しい経験を共有することが有効です。絵本を読んだり、遊びを通じて社会性や自制心を養うことができます。親が過度に子どもの成長を先回りしようとせず、子ども自身が考え、行動する機会を与えることも重要です。
子育ては一朝一夕で成し遂げられるものではありません。親が子どもの成長を見守り、共に学び成長していくことが、子どもの真の可能性を引き出す秘訣なのです。