脳性まひの救済、「複雑な線引き」に保護者の思いは複雑
子育てノウハウ
2023.12.20
第一子が脳性まひであることを公表したタレントの柳原加奈子さん。とても勇気のある公表に、同じような子供を持つ親から理解や応援の声が上がっています。
出産時に子供に脳性まひが分かった場合、3,000万円が支払われる「産科医療保障制度」をご存じですか?
この度、古い基準で救済の対象外となってしまった子供達が救済される方向になったとのことです。
しかし提示されたのは1,200万円という金額。
家族らは満額を求めてきましたが実現は難しいとのことでした。
障害のある子供を社会で支える仕組みがもっと手厚くなるように、様々なところから声が上がっています。
(※2023年11月8日朝日新聞朝刊を参考にしています)
目次
「産科医療保障制度」が始まったのは2009年
2009年に始まったこの救済制度は、満5歳の誕生日までに申請できます。
●2009~2014年:妊娠33週以上で体重2,000g以上の赤ちゃんが対象
●2015~2021年:妊娠32週以上で体重1,400g以上の赤ちゃんが対象
もし28週以上などの場合は分娩中に胎児が低酸素状態だったことなどを「個別審査」で認められる必要があります。
このように同じような病態にもかかわらず、対象の子供と対象ではない子供がおり、保護者からは以前から不公平だとの声が上がっていたそうです。
●2022年1月から改訂:妊娠28週以上は体重に関係なく対象となる。個別審査は「医療の進歩により医学的に矛盾している」とされ、廃止されました。
救済されるのは2009~2021年、「個別審査」で対象外とされてしまった子供達
2022年の改定後に、以前「個別審査」で対象外となってしまった子供を持つ保護者らから救済を求める声が上がりました。
いろいろと話し合われた結果、一人当たり1,200万円が給付される方向で調整されているとのことです。
対象外となった子供達は570人います。救済されるのは良かったのですが、満額の3,000万円には到底満たず、保護者は複雑な思いを抱えているのだとか。
また、そもそも2008年以前に生まれた子供は何も救済されず、その点でも不公平感は否めません。
脳性まひとはどんな病気?
脳性まひ(Cerebral Palsy, CPと略)は、中枢神経系の発達がなんらかの障害をうけ、運動や筋肉の制御が難しい状態を指します。
この障害は、脳の異常発達や損傷に起因しているケースが多く、出生前、出生時、出生後のいずれかの段階で発症します。
脳性まひは進行性ではありませんが、成長とともに症状が変化することはありません。
主に運動機能に影響を与えており、歩行や手の動き、姿勢の制御が難しいとされています。
脳性まひの発症の原因は?
脳性まひの原因は多岐にわたります。代表的な要因には以下です。
出生前の要因
異常発達:胎児の脳が正常に発達しないことが原因となることがあります。
遺伝的な要因:遺伝的な変異が関与することもあります。
出生時の要因
窒息:出産時に胎児への酸素供給が不足することで脳が損傷を受けることが原因となることがあります。
早産:未熟児は脳の発達が未成熟なため、脳性まひのリスクが高まります。
出生後の要因
脳損傷:何かしら脳に外部から損傷が加わることが原因となることがあります。
感染症:脳に影響を与える感染症が原因となることがあります。
脳性まひの子供のための道具
脳性まひを抱える子供たちが生活をより快適に過ごすためには、様々な支援が必要で、以下のような装具があります。
①歩行補助具(ウォーカー)
脳性まひの子供たちが安定した歩行できるようにサポートします。これにより、自立した移動が可能になります。
②装具(オルソーシス)
骨や筋肉の異常な発達を補正し、正しい姿勢を保つために使用されます。例えば、足首や膝の装具などです。
③車椅子
歩行が難しい子供の場合や長距離の移動に使用され、子供たちが社会とのつながりを保つのに役立ちます。
④コミュニケーションボード
言葉の発達に遅れがある場合、コミュニケーションボードや音声合成デバイスが使われます。子供達との意思疎通をサポートします。