痛みが母性を引き出すわけではない!無痛分娩への理解を求める
子育てノウハウ
2026.02.06
「産みの苦しみ」について実施したアンケートの結果、多くの方々が「出産時の痛みと母性とは無関係である」と感じていることが明らかになりました。
無痛分娩を体験した人々の声を通して、日本における出産の現状について今一度見つめ直します。
アンケートに回答した中で、無痛分娩を選んだ方々に直接お話を伺いました。
出産の方法がどうであれ、それが楽であるというわけではありません。そして、子どもに対する愛情は、方法に関係なく変わらないという思いが語られました。
(※2025年9月21日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
目次
「痛み」と向き合って見えたこと―2度の出産を経て考えた無痛分娩という選択
東京都在住の上野江美さん(50)は、2009年に長男を自然分娩で、2013年には次男を無痛分娩で出産しました。
最初の出産では、産院の方針に従って自然分娩を選んだものの、その激しい痛みに強い衝撃を受けたといいます。
出産の3日前から前駆陣痛が始まり、子宮口が4.5cmほど開いた段階では、数分おきに訪れる陣痛に「次の波が来ることがただただ恐ろしかった」と振り返ります。
骨盤が押し広げられるような鈍い痛み、下痢のような腹部の苦しみ、そして子宮の収縮による痛みが複雑に重なり、何が起きているのかも分からなくなったそうです。
「ここからさらに子宮口を10cmまで開くなんて…」と、呆然とした気持ちになったと語ります。
痛みに耐えながら、「次に出産する時は、必ず無痛にしよう」と心に誓ったそうです。
半日かけて出産を終えたあと、長男と初めて対面した瞬間については、「まるで『はじめまして』という感覚で、自分でも戸惑いがありました」と語ります。
しかし、母としての実感が湧いてきたのは、出産後の育児を通してだったといいます。
「数日後には、自然と愛情があふれてきて、自分でも驚きました。気づけば、かけがえのない存在になっていたんです」と話します。
次男の出産では、本格的な陣痛が始まってから麻酔を使う「和痛分娩」を選択しました。
その際には「麻酔後はほとんど痛みを感じず、陣痛があることはうっすら分かる程度でした」と振り返ります。
2度の出産を経て、上野さんはこう感じています。
「仮に無痛分娩という選択肢がなかったとしても、子どもを産む決断は変わらなかったと思います。ただ、その日を迎えるまでの心の準備は、まるで違ったはずです。出産への恐怖があるかないかは、日常や仕事にも大きく影響しました」と語ります。
さらに、出産の痛みを体験したことで「すべてのお母さんに対して尊敬の気持ちが生まれました」と話す上野さん。
自然分娩を通じて得た気づきもある一方で、いまはこう考えているそうです。
「自分が大変な思いをしたからといって、他の人にも同じ苦しみを味わってほしいとは思いません。痛みが少しでも和らぐのであれば、その方が良いと感じています。無痛分娩という選択肢が、もっと広く理解されていってほしいです」。
「無痛」といえども、全く痛みがないわけでありません。
東京都内にお住まいの大塚奈々さん(37)は、2022年に長女を無痛分娩で出産されました。
友人やSNSなどから「無痛は回復が早い」と聞き、育児に向けて少しでも体力を温存したいという思いから、その方法を選ばれたそうです。
しかし、実際の出産は想像をはるかに超えるものでした。
破水後に病院へ向かったものの、本陣痛はなかなか始まらず、8時間半もの間待機することになりました。
病院側からは「本格的な陣痛が始まってから麻酔を使う和痛分娩です」と事前に説明を受けていたものの、本人の感覚では、すでにその時点でかなり強い痛みを感じていたといいます。
やっと陣痛が本格化して麻酔を投与されたものの、今度は力の入れどころが分からなくなり、うまくいきめなくなってしまいました。
最終的には陣痛促進剤を使い、助産師が体重をかけて補助する中での吸引分娩となりました。
「出産の痛みを正直なめていました」と、大塚さんは苦笑しながら振り返ります。
破水から出産までに13時間以上を要し、出産後もお腹を圧迫されたことによる内出血の痛みや、会陰切開の傷がしばらく残ったといいます。
無痛分娩に対する都の助成制度が始まり、選択肢が広がったことについては「出産に対する不安が少しでも軽減されるのであれば良いことだと思います」と語りつつも、「ただ、『無痛=まったく痛みがない』とは限りません。私にとっては和痛でも十分につらい体験でした。出産の痛みは、経験して初めて実感するものだと痛感しました」と述べています。
そして今年1月、大塚さんは第2子の長男を出産しました。
逆子だったため、今回は帝王切開となりました。
手術台に上がってから赤ちゃんが誕生するまで、わずか5分ほどで、「本当にあっという間の出来事でした」と話します。
2度の異なる形での出産を経て、彼女の思いはこうです。「自然分娩でも帝王切開でも、子どもと初めて対面した時の安心感や、母としての感情の芽生えには違いはありませんでした。出産は何が起こるか予測できないものです。どんな方法にもそれぞれの良さや事情があると理解していれば、優劣をつけるような議論は生まれないはずです。母子ともに無事であることが、最も大切なことだと感じます」。