若い人に希望を!「もう子どもは諦める・・・」
キッズパーク豆知識
2026.01.13
子どもの数が減少し続けており、その流れはとどまる気配を見せていません。
では、そもそも少子化への対応はなぜ求められるのでしょうか。
もし対応が必要だとすれば、どのような施策が考えられるのでしょうか――。
『なぜ少子化は止められないのか』などの著書を持つ、日本総合研究所の主席研究員・藤波匠氏にお話を伺いました。
(※2025年9月3日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
目次
子どもを望んでも諦める現実・・・問われる企業と社会の責任
国内では2024年の出生数が約68万6千人にとどまり、女性1人あたりが生涯に産むとされる子どもの数、いわゆる合計特殊出生率も1.15と過去最低を記録しました。少子化の進行は予測されていたものの、状況はますます深刻化しています。
この背景には、若年層の人口減少が大きく影響しており、短期的に劇的な改善が見込める状況ではありません。これらの統計は単なる数字ではなく、社会全体のあり方を映す「鏡」であると私は捉えています。
特に注目すべきなのは、「若者たちが未来に希望を持てているかどうか」という点です。意図的に子どもを持たない選択をしている人もいるでしょう。しかし現実には、「本当は子どもがほしい」と願いながらも、経済的理由や仕事の多忙さなどによって断念しているケースが少なくないのではないでしょうか。もしそうであるならば、それは個人の問題ではなく、社会の構造に課題があると言えるはずです。
たとえば、非正規雇用の女性は正規雇用の女性に比べて、結婚や出産に対して消極的であるという調査結果もあります。また、子どもを持つ家庭の多くが中高所得層に集中し、所得が低い世帯では子育てが難しくなっている現状も浮かび上がっています。
結婚や出産への意欲の低下を「価値観の変化」で片づけてしまってよいのでしょうか。そこには見逃してはならない社会的課題が潜んでいるように思われます。
保育サービスの拡充など、すでに子育てをしている家庭への支援は重要ですが、それだけでは不十分です。特に、日本では結婚しているカップルから子どもが生まれる割合が高く、非婚のまま子どもを持つケースは少数にとどまっています。そのため、「結婚を促す支援」が重要視されるのは理解できますが、「婚活」のような表面的な対策だけでは根本的な解決にはつながりません。
若い世代が結婚に前向きになれるような社会の土壌づくりこそが求められており、その鍵は経済の安定と成長にあるのです。事実、ドイツでは2010年から2016年にかけて出生率が上昇しましたが、当時はヨーロッパでも経済的に良好な状況にありました。こうした経済環境が、人々の出産や結婚への前向きな姿勢を支えていたと考えられます。
日本はバブル経済崩壊以降、「失われた30年」とも呼ばれる低成長時代を迎えました。私の分析によると、大卒の正社員男性に限って見ても、団塊ジュニア世代の生涯年収はバブル世代と比較して約2,000万円も少ない可能性があります。これは、子ども1人を大学まで育てる費用に匹敵する金額です。若者世代が上の世代よりも経済的に厳しいという現実が、少子化を招く当然の結果と言えるのではないでしょうか。
こうした状況を招いた背景には、30年にわたって有効な成長戦略を打ち出せなかった歴代政権、そして低賃金労働を前提に派遣労働を広げた企業の責任も問われるべきです。
本当に必要な対策とは何なのか?
では、今後どのような対策が必要なのでしょうか。児童手当などの現金給付は否定しませんが、それだけで少子化が解消するとは考えにくいです。複数の子どもを持つ家庭に対して手厚い支援を行う施策もありますが、そこから一気に5人、6人と子どもを持つ時代に戻れるわけではありません。それよりも、まず第1子を持つことすら難しい人々への支援が不可欠です。
目指すべきは、若い人たちが希望を持って暮らせる社会です。その実現のためには、賃金の引き上げや非正規から正規雇用への転換など、企業が果たすべき役割が極めて大きいと考えます。
また、日本社会の構造的な問題にも目を向けなければなりません。長時間労働や、休日にも自己研鑽を求められるような働き方が未だに美徳とされる風潮が残っています。若いうちから仕事と家庭を両立できる環境を整備することが大切です。そのためには、「男性は働き手、女性は家庭を守る」といった旧来の性別役割分担を見直し、ジェンダーギャップの是正にも本格的に取り組む必要があります。