身長150cmに満たない子、シートベルトの着用に注意を!

子育てノウハウ

長期休暇である夏休みや冬休みには、多くの人が実家へ帰省するため、交通量が一段と増加します。
特に自家用車での長距離移動が増えるこの時期に、改めて意識したいのが、子どもに対するシートベルトの適切な装着方法です。
ただ着用していれば安心というわけではありません。
不適切な使い方は、重大な事故につながるおそれがあります。
子どものチャイルドシートやジュニアシートの着用は、教育の一環と考えたいですね。
(※2025年8月8日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)

見落とされがちな安全対策、小学生以降もジュニアシートの活用を

昨年8月、福岡市内で軽乗用車とバスの衝突事故が発生しました。
この事故では、軽乗用車の後部座席に座っていた7歳と5歳の子ども2人が命を落としました。
どちらの子どももシートベルトは着用していましたが、チャイルドシートなどの補助装置は使用されていなかったと報告されています。
その結果、シートベルトが腹部を強く圧迫し、内臓に致命的な損傷を与えた可能性があるとされています。

身長に合わせた安全対策を、チャイルドシートの重要性は大きい

道路交通法では、6歳未満の子どもに対してチャイルドシートの使用が義務付けられていますが、6歳を超えると法的な義務はありません。
しかし、日本自動車連盟(JAF)は、年齢ではなく「身長150cm未満」の子どもに対して引き続きチャイルドシートの使用を推奨しています。
チャイルドシートには、乳児用(ベビーシート)、幼児用、そして学齢期の子ども向けのジュニアシートやブースターシートといった3つの種類があります。
では、身長が150cmに達していない子どもが補助シートを使わずにシートベルトを着けた場合、どうなるのでしょうか。
適切な位置にベルトがかからず、首やお腹に食い込んでしまうことがあり、万が一の事故の際には、頸椎や内臓に深刻なダメージを受けるリスクが高まります。
正しくは、ベルトが鎖骨の中央から胸の骨、そして腰骨の低い位置を通るように調整する必要があります。

シートベルトだけでは不十分、成長段階に応じた安全対策は必須

交通事故総合分析センター(ITARDA)は、2013年から2022年の10年間に発生した交通事故のデータをもとに、シートベルトは着用していたものの、チャイルドシートやジュニアシートを使用していなかった6~19歳の子ども64人の死亡事故について、致命傷となった部位を分析しました。
その結果は昨年、公表されました。
対象者を(1)6~12歳、(2)13~19歳の2つのグループに分けて調べたところ、どちらの年代でも最も多かったのは頭部で、約40%を占めており、その他の部位に関しては大きな差は確認されませんでした。
ただし、腹部の損傷に関しては違いが見られ、(1)では13人中4人(30.8%)、(2)では51人中5人(9.8%)と、低年齢層の方が割合が高くなっていました。
この分析を行った菱川豊裕研究員は、「6歳を過ぎたらシートベルトだけで安全だと誤解されるケースが多い」と警鐘を鳴らしています。

子どもの命を守るためにチャイルドシート使用の見直しを!

JAFの丹野祥孝・調査研究課長は、「子どもが自分自身でシートベルトの正しい装着状態を判断するのは難しいものです。たとえ6歳を過ぎていても、身長が150cmに達するまではジュニアシートを併用し、大人がしっかりと正しい装着状況を確認する必要があります」と注意を呼びかけています。
また、JAFやITARDAは子どもの安全を守るためのポイントとして、次のような点に言及しています。
(1)チャイルドシートはできる限り後部座席に設置すること。
(2)前面衝突時の衝撃を広い面で受け止められるように、乳児用のチャイルドシート(新生児から1歳ごろまで使用)は、車の進行方向とは逆向きに設置すること。
さらに、日本小児科学会は、「法律に従っていても、重大な交通事故によって命を落としたり、重い後遺症を抱えたりする子どもがいる現実を、私たち小児科医は日々目にしています」とし、昨年12月、警察庁に対して現在の「6歳未満」までとなっているチャイルドシートの使用義務を、「13歳未満かつ身長150cm未満」まで引き上げるよう要望を提出しました。
ドイツやイタリアなどでは、身長150cm未満の子どもに対してチャイルドシートの使用を法律で義務付けている国も存在します。日本でも同様の見直しが求められています。

子どもを守るのは大人の責任、広がる安全対策の呼びかけ

複数の医学系団体でも、チャイルドシートの使用義務拡大に向けた提案が検討され始めています。
日本医科大学千葉北総病院・救命救急センターの本村友一医師は、自身のYouTubeチャンネルで啓発動画を公開するなど、社会全体に注意喚起を行っています。
医療の現場では、シートベルトが原因となる内臓へのダメージについて、「シートベルト損傷」や「シートベルト外傷」といった専門用語でその危険性が認識されています。
本村医師は、「シートベルトは本来、安全のための装置ですが、使い方を誤れば命に関わることもあります。
その事実は、まだ十分に周知されていないのが現状です」と警鐘を鳴らします。
さらに、「子どもは大人に比べて筋肉量が少なく、骨もやわらかいため、衝撃による内臓損傷のリスクが高いです。子どもの命を守るための配慮は、私たち大人の責任です」と力強く訴えています。