大人だけで勝手に議論しないで子どもの意見も聞いて!
子育てノウハウ
2025.09.05
「大人同士で結論を出すのではなく、子どもの思いにも耳を傾けてほしい」。
これは、新型コロナウイルス感染拡大後に国立成育医療研究センターが実施した子ども向けアンケートで寄せられた声です。
全国的な一斉休校や黙って食事をする「黙食」、学校行事や部活動の中止など、子どもたちは普段と異なる生活を余儀なくされましたが、その多くが自身の感情や意見を尋ねられる機会を持てませんでした。
この調査を担当した児童精神科医・山口有紗さんは、感染拡大が始まって間もない時期からアンケートの実施を開始しました。
同センターでは、子どもの心と体の健康、そして権利を守る必要があるとの考えから、2020年4月に「コロナ×こども本部」を設置しました。
そして7~17歳の子どもや、0~17歳の子どもの保護者を対象に、オンラインと郵送の両方で計7回のアンケートを行いました。
(※2025年4月8日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
目次
子どもたちの声に映る未だに長引くコロナ禍の影響
-いったいどのような意見が寄せられたのでしょうか。
生活リズムの乱れや就寝時刻の遅れ、運動量の減少など、日常の変化が目立ちました。
さらに「給食中に友達と会話できない」「感染への不安」「自由や気持ちが制限されているように感じる」といった声から、子どもたちが強いストレスを抱えていることが明らかになりました。
また、「学校での感染対策に自分も関わりたい」「部活動や学校行事は、大人が想像する以上に大切な存在です」といった、子どもの意見を聞いてほしいという要望も多く寄せられました。
-子どもの心の変化について、どのようなことに気づいたのでしょうか。
生活環境の変化によるストレスが、予想以上に長期間続いていることです。
同センターの調査では、「疲れを感じる」「意欲がわかない」といった抑うつ傾向が中等度以上とされる子どもは、2020年から2022年にかけて増加しました。
また、「取り残されている」といった孤独感も、2021年から2022年にかけて改善が見られませんでした。
大人にとっては制限が減り、日常が戻ってきたように感じても、子どもたちの心理的負担は依然として高い可能性があることが分かりました。
コロナ禍で浮き彫りになった支援格差と子どもへの影響
―新型コロナがなくても困難な状況にあった子どもたちへの影響は、より深刻だったそうです。
国内外の多くの研究により、経済的に不安定な家庭環境や心身の病気、家庭内暴力などの問題を抱える子どもほど、外部からの影響を強く受けやすいことが指摘されています。
児童相談所の一時保護所で暮らす子どもたちとコロナ禍を振り返ると、家族が出勤や通学を控えることで家庭内に長時間一緒にいる時間が増え、その結果、人間関係が悪化し、より深い苦しみを感じたケースが多く語られました。
影響は家庭の中だけにとどまりません。
友人と遊ぶ機会や、安心できる居場所に行く機会が失われ、子どもを守っていた「保護因子」と呼ばれる存在が弱まってしまいました。
その結果、自傷行為や自殺の増加も確認されています。
社会全体が困難に直面したとき、負担が最も弱い立場の子どもに集中してしまうという現実が、コロナ禍を通じて鮮明になったと感じます。
子どもの声を生かす社会へ・・・コロナ禍から得た示唆
―コロナ禍を通して、子どもの声を尊重する社会づくりにおいて得られた学びは何でしょうか。
この数年間で、子どもの心の健康状態や意見の重要性について、社会全体の認識が以前より高まったと感じます。
しかし、子どもの声とは必ずしも「明確な意見」だけを指すものではありません。
むしろ、日常生活そのものが子どもの声であり、動作や何気ない言葉、日々の中で表れるさまざまな表現が大切なメッセージなのです。
さらに、子どもの声が大切にされる社会は、大人の声も同じように尊重され、すべての人の権利が守られる社会だと考えます。
コロナ禍では、社会全体が大きな困難を抱え、個々の思いや経験を語りにくい空気がありました。
だからこそ今、振り返って共有できることや、未来をより良く変えるためのきっかけがあるはずです。