性別役割意識や長時間労働の慣行「子育ては女性がするもの」

キッズパーク豆知識

昨年誕生した子どもの数は、外国人を含めて約72万人となり、統計が始まって以来、最も少ない記録となりました。
少子化の進行が一層深刻になる中で、政府もさまざまな対策に取り組んでいます。
しかしながら、「育児は女性の役割」といった固定的な性別による役割分担の意識や、長時間労働が当たり前とされる職場文化など、根本的な課題は依然として解決されていません。
何年も前から問題とされていることですが、一向に改善されません。この状態で少子化対策を行っても意味がないのでは、とも感じてしまいます。
(※2025年2月28日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。

複雑に絡む背景、止まらない少子化

子どもの総数(外国人を含む)が100万人を下回ったのは2017年のことでした。
その後も減少は続き、2022年には80万人を割り込みました。
2024年の出生数は前年比で約5%減となっており、2023年とほぼ同じペースで減少が進んでいます。
こうした状況から、少子化の流れは依然として止まる気配がありません。
少子化の原因は一つではなく、さまざまな要素が絡み合っています。
出産年齢にあたる女性の人口が減っていることに加え、未婚化や晩婚化の進行、経済的な負担の大きさなどが影響しています。
また、仕事と家庭の両立が難しい現実の中で、子どもを持たないという選択をする人も増えています。

結婚と出産に対する価値観の変化が浮き彫りになった現代

婚姻件数は、出生数に大きな影響を及ぼす重要な要素です。
2020年には新型コロナウイルスの影響で前年比約13%減少し、約54万組まで大きく落ち込みました。
その後も回復の兆しは見られず、2024年には49万9999組と、依然として低い水準にとどまっています。
さらに、「結婚すれば子どもを持つべき」という考え方も薄れつつあります。
国立社会保障・人口問題研究所が2021年に実施した調査によると、そのような考えを持つ未婚女性の割合は37%で、6年前の前回調査から30ポイントも減少しました。
男性の場合は55%で、こちらも20ポイントの減少が見られました。

少子化対策の拡充が進む都心と地方に残る深刻な課題とは

政府は2023年末、「異次元の少子化対策」として、2028年度までに年間約3.6兆円の予算を投じる方針を打ち出しました。
この政策には、児童手当の大幅な増額に加え、共働き家庭を支援する施策として、夫婦がともに育児休業を取得した場合に手取り相当額の100%を給付する制度も含まれています。
しかしながら、課題は依然として多く残されています。
有識者によって構成される「人口戦略会議」は昨年、2020年から2050年の間に、全国744の自治体で20~39歳の女性人口が半数以下に減少し、その結果、地域そのものが消滅する可能性があるという分析を公表しました。
この分析に関与した板東久美子・元消費者庁長官は、「地方では性別に対する固定観念が依然として根強く、それが若い世代の流出につながっている」と指摘しています。

制度の前に「地方に暮らす女性の生きづらさ」を理解して!

「まずは制度よりも、地方に暮らす女性たちの苦しさに目を向けてほしいです」。
そう語るのは、岩手県宮古市で最年少の市議を務める佐々木真琴さん(28歳)です。
人口戦略会議の推計によれば、宮古市では2040年から2050年にかけて20~39歳の女性人口が61.5%減少する見通しが示され、人口減少を抑えるための取り組みが急務であると指摘されています。
佐々木さんは、
「女性にとっての幸せは結婚して子どもを育てること」
「育児は母親が担うもの」
といった考え方が、いまだに地域社会に根強く残っていると話します。
「そろそろ結婚しないの?」「子どもはまだ?」
といった言葉は、日常的に投げかけられるそうです。
また、佐々木さんがインスタグラムを通じて、地方での暮らしに感じる息苦しさをフォロワーに尋ねたところ、
「帰省のたびに『まだ嫁に行ってないの? 仕事ばかりじゃだめだよ』と言われるのがつらい」
といった声が多く寄せられました。
佐々木さん自身も、「もう限界だと感じ、この場所に住み続けるのは難しいと思うことがあります」と明かします。
「地方には仕事がないから若者が出て行く」とよく言われますが、佐々木さんは「原因はそれだけではありません」と強調しています。

子育てとキャリアの両立は無理?「賃金格差」の現実

出産や育児によって職場で不利益を被る、いわゆる「子育てペナルティー」は、多くの場合女性に集中しています。
東京大学の山口慎太郎教授(経済学)らによる調査では、大手製造業を対象に、子どもを持つ女性とそうでない女性を比較した結果、出産後の10年間で、子どもを持つ女性の平均賃金が約46%も低下していたことが明らかになりました。
一方で、男性の場合は8%の賃金増加が見られました。
さらに、子どもがいない場合の男女間の賃金差はおおむね12~13%ですが、子どもが生まれた後では10年後に約47%にまで開くと分析されています。
賃金格差の要因としては、出産直後は育児休業の取得や短時間勤務などの制度利用による影響が大きいとされています。
ただし、年数が経過するにつれ、長時間勤務が高く評価されやすい職場風土が足かせとなり、女性が昇進の機会を得にくくなることが、手当の差や役職の不均衡につながっているといいます。
山口教授は、「女性の働きやすさを重視して時短勤務などの支援制度が整備された一方で、結果として『マミートラック』(出産を機に責任ある仕事から外される状態)に陥るケースが増えている」と指摘しています。

まだまだ女性に偏る子育て。働き方改革の必要性

総務省が2021年に実施した社会生活基本調査によると、6歳未満の子どもがいる家庭において、1日に家事や育児に費やす時間は、夫が約1時間54分であるのに対し、妻は7時間28分にも及んでいます。
このように、育児や家事の負担が女性に集中している現状に対し、東京大学の山口慎太郎教授は「子育て支援は女性だけのものではありません」と強調しています。
男女間の不平等を解消するためには、単に制度を整えるだけでなく、男性も含めた働き方全体を見直す必要があるとし、「長時間労働の是正など、働き方改革そのものに本格的に取り組むべきです」と述べています。