「少子化の原因は女性にあるの?」政治家の発言にモヤモヤ

子育てノウハウ

少子化の責任があたかも女性に偏っているかのような発言を繰り返す政治家たち。
聞いていてモヤモヤした女性も多いはずです。
その言葉の奥に潜む価値観とは何なのでしょうか。
貧困問題やジェンダーに関する記事を執筆しているライターのヒオカさんが、怒りをもってその背景を掘り下げます。
(※2025年2月26日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)

女性にしか分からない「生理の苦しみ」逃れられたら・・・

中学か高校の頃だったと思います。
あるときふと、「男性として生まれていればよかった」と感じたことがありました。
ただし、それは「男性になりたい」という願望ではなく、生理や出産といった避けられない身体的な負担から逃れたいという切実な思いからでした。
私は生理のたびに激しい痛みに襲われ、骨が金づちで砕かれるような感覚や、鉄の球をお腹に落とされたような重苦しさに苦しめられていました。
さらに、胃腸の不調、頭痛、極度の倦怠感など、数え切れないほどの症状が重なり、嘔吐してしまうことも少なくありませんでした。
それでも検査では異常が見つからず、この苦しみが来月もまた繰り返されるのかと思うと、「もう生きていくのが嫌だ・・・」とさえ真剣に思ったこともありました。

押しつけられた「女性がやるのが当たり前」の葛藤

私が暮らしていた地域は田舎の地方で、性別による役割分担や固定観念が根強く残っていました。
大人になれば当然のように結婚し子どもを産むものだと周囲から教え込まれていました。
自分自身もそんな環境の中にいると何も疑わないものです。
けれども、出産は生理よりもはるかに強い痛みを伴うと耳にするたびに、恐怖で心が押し潰されそうになりました。
子どもを望まない自分の気持ちは、ただ自分がまだ若いからだと考え、無理やり納得しようとしていたのです。
しかし歳を重ねるにつれて、その考え方は変わりませんでした。むしろ、女性としてこの世に生まれたことへの憎しみや嘆きが、次第に大きくなっていきました。

「少子化対策」の名を借りた暴言に悲しみ、諦め

先日、日本保守党代表の百田尚樹氏による少子化に関する発言が、多くの人々に衝撃を与えました。
自身が出演するYouTube番組の中で、「これはあくまでSFの話」と断りを入れたうえで、次のような発言をしました。
「女性は18歳を過ぎたら大学に進学させない」
「25歳以上で独身の女性は、その後結婚を認めない法律を設ける」
「30歳を過ぎたら子宮を摘出する手術を行う」などと述べたのです。
その狙いは、女性たちに危機感を抱かせ、出産を早める効果を期待してのことだと語りましたが、このような極端な提案は社会に大きな波紋を広げました。
なんとも身勝手な発言です。

出産と年齢を巡る発信が呼び起こした論争とは

後日、日本保守党群馬支部長がXにて「拡散希望」とのタグを添えて投稿を行いました。
その内容では、「高齢出産には医学的に見てもリスクがある」としたうえで(医学的には35歳以上が該当します)、高齢出産に関連するさまざまな合併症や出産時の危険について詳細に述べられていました。
さらに投稿では「性に関する倫理観を身につけるべきだ」と主張し、百田氏の発言に込められた「本質を理解すべき」との考えも示されていました。
これに対し、「女性はすでにそういった情報を知っている」「若いうちに出産したくても事情があってできない人がいる」といった反論の声が多く寄せられ、議論は広がっています。
若いうちに出産することはたくさんのメリットがあることを、嫌というほど叩きこまれてきた女性達。
本当に余計なお世話です。
「社会や環境が整っているのなら産みたい」こう思う女性も多いのではないでしょうか。

なんで女性ばかりが時間に追われるの?

女性たちは日常的に「期限」を意識せざるを得ない状況に置かれています。
「若さこそが女性の価値だ」といった固定観念にさらされ、高齢出産にまつわるリスクの情報ばかりが強調されがちです。
しかし現実には、男性の年齢が上がることによっても、不妊や流産といったさまざまな問題が生じることがあります。
その影響を受けるのは結局、女性なのです。にもかかわらず、男性側のリスクについての認知はまだまだ不十分です。
たとえば結婚相談所では、40歳を超えた男性が「子どもが欲しい」という理由で20代の女性を求める例も見られます。
このように、自身の年齢的な限界を意識せずにいる男性は少なくありません。
女性の出産年齢ばかりを問題視するのではなく、むしろ男性にも正しい知識と現実を伝える取り組みが必要ではないでしょうか。
さらに、順調に大学を卒業して社会に出るとすれば、平均的には23歳前後になります。
もしも入社から数年で産休を取れば、「空気が読めない」と陰口を叩かれることもあり得ます。
一定のキャリアを築いてから出産を選べば、「高齢出産」としてまた別の批判を受けることになるのではないでしょうか。

異議あり!少子化の責任を女性だけに押しつける風潮

百田氏が語った発言の本質は、単に高齢出産のリスクを指摘することではないと考えます。
その根底にあるのは、「女性に出産を促すためには、女性の権利を制限しても構わない」という差別的な価値観、さらには少子化の原因を一方的に女性に求めるという偏った見方ではないでしょうか。
過去にも、「少子化の最大の原因は、出産年齢の上昇にある」といった麻生太郎氏(当時自民党副総裁)の発言が報じられるなど、政治家たちの言葉からも、女性にのみ責任を押しつけるような思想が根深く社会に根付いていることがうかがえます。
妊娠や出産の当事者にはなり得ない男性たちが、政策決定の立場に立ち、まるで「女性が知識もなくのんびり構えているから少子化が進むのだ」と語るような姿勢には、強い憤りを感じざるを得ません。