「女性活躍推進」なのに「長時間労働のまま」は矛盾!

子育てノウハウ

「長時間労働が続く環境での女性活躍は、もはや苦しみでしかない!」
そう語るのは、企業の働き方改革を支援してきたワーク・ライフバランス社長の小室淑恵さんです。
共働き世帯が増えるなか、子育てしやすい社会を実現するには、どのような取り組みが求められるのでしょうか。
(※2025年2月17日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)

子育て支援だけでは不十分。働き方改革とセットで進めるべき少子化対策

少子化対策の成功例とされる国々は、子育て支援と働き方改革を一体的に進めてきました。
しかし、日本では他国の政策を参考にする際、働き方の改善には十分な注意が払われていません。
どれほど多額の予算を投じて子育て支援を強化しても、長時間労働や「残業頼み」の働き方を見直さなければ、十分な効果は期待できないでしょう。
社会全体で協力し合い、新たなスタンダードを築くことが求められています。

長時間労働がもたらした歪み?誰もが苦しむ社会

長時間労働が前提のまま女性活躍を推進した結果、女性だけでなく男性にとっても生きづらい社会になっていると感じます。
夫婦は対等だと思っていても、女性は出産を機にその理想と現実の違いを痛感し、ワンオペ育児に追われる中で夫への不信感や嫌悪感を募らせていきます。
一方、男性も依然として長時間労働や職場の重圧にさらされるなか、働く妻から家事・育児の分担を求められ、心身ともに限界に達している人も少なくありません。
さらに、働き方の基準が変わらないことで、子育てしながら意欲的に働く人が、残業できないという理由だけで評価を下げられてしまうという問題も起きています。
今こそ、社会全体で働き方を見直す必要があるのではないでしょうか。

長時間労働の見直しが、夫婦の協力と少子化対策の鍵に

男性の帰宅時間が早まれば、夫婦が協力して子育てしやすい環境が整います。
女性の家事・育児の負担が軽減されることで、キャリアを続けやすくなり、出産や育児に前向きな選択がしやすくなるでしょう。
結果として、出生率の向上にもつながる可能性があります。
そのためには、労働基準法を改正し、労働時間の改善を進めるべきです。
現在の日本の制度では、新たに人を雇うよりも残業をさせた方が企業にとって有利な仕組みになっています。
これを見直し、誰もが働きやすい環境を整えることが求められています。

残業代の低さが生む悪循環、なぜ日本は長時間労働がなくならないのか

日本の労働基準法では、残業代は通常賃金の1.25倍以上と定められていますが、他の先進国では約1.5倍が一般的です。
産業別労働組合JAMの試算によると、日本でも時間外労働の割増賃金率が1.53倍になれば、企業にとって新たに人を雇う方が残業させるよりもコストを抑えられることが分かっています。
しかし、現状の1.25倍では、企業はできるだけ社員数を減らし、既存の社員に残業させた方が利益を得やすい仕組みになっています。
そのため、残業ができる人が評価され、社員同士も「休むと迷惑をかける」と牽制し合いながら、余裕のない働き方を続けざるを得ません。
「子持ち様」という対立が生まれる背景には、こうした制度の問題が根本にあります。
つまり、日本の法律が長時間労働を前提とした経営を「推奨」しているのです。

残業頼みの働き方からの転換-多様な働き方で経済成長を

残業時の割増賃金率は、現在の1.25倍から1.5倍に引き上げるべきです。
日本では、残業が可能な人の数が年々減少しており、残業を前提とした働き方はもはや持続可能ではありません。
育児や介護を抱えて残業は難しくても、働く意欲や能力を持つ人は多くいます。
また、仕事を続けたいと考える高齢者も少なくありません。
こうした多様な人材が協力し、短時間で仕事をつなげる仕組みを整えれば、日本の経済はまだ成長できるはずです。
企業がこの方向へ進むために、国はどのようなインセンティブを設けるべきか、真剣に考える必要があります。

勤務間インターバルの義務化がもたらす働き方の変革

勤務間インターバルとは、1日の勤務終了後から翌日の始業までに一定の休息時間を確保する制度です。
EUでは11時間の確保が義務付けられていますが、日本では現在、努力義務にとどまっています。
11時間の休息が確保されれば、十分な睡眠だけでなく、家族との時間も守られ、働き方そのものが変わります。
すでに勤務間インターバルを導入した企業では、特定の優秀な社員に業務が偏ることがなくなり、仕事の分担が進んで業務の属人化が解消。
情報共有がスムーズになり、誰が休んでも業務が滞らない仕組みが整いつつあります。
このような環境が広がれば、育児や介護などで長時間働けない人も責任ある仕事を担いやすくなります。
夫婦が仕事を辞めずに協力して家事・育児をこなし、安定した生活を築けるようになれば、子どもを持つ選択もしやすくなるのではないでしょうか。

働き方改革は経済成長の妨げではない。持続可能な未来のために

働き方を見直すことは、決して経済成長を阻むものではありません。
むしろ、人口減少に歯止めをかけつつ、日本の経済を発展させるためには、どのような働き方が求められるのかを真剣に考える必要があります。
これまでの常識や慣習にとらわれず、政府は積極的に議論の場を設け、より柔軟で持続可能な働き方を実現するための方策を打ち出してほしいと思います。