地域のつながりを育む「こども食堂」全国に1万箇所
子育てノウハウ
2025.03.21
無料または低価格で食事を提供する「子ども食堂」は、全国で1万カ所を超えるまでに広がりました。コロナ禍や物価高といった厳しい状況の中でも、世代を超えた地域の「居場所」として定着してきた背景があります。
(※2024年12月12日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
目次
広がる子ども食堂の役割と多様な支援のかたち
NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」は11日、全国の子ども食堂に関する調査結果を発表しました。
同法人は、子ども食堂を「子どもが一人でも安心して行ける無料または低額の食堂」と定義し、調査を実施。
その結果、今年度の子ども食堂の数は全国で1万866カ所に達し、公立中学校約9,300校を上回る過去最多となりました。
子ども食堂の活動は、2012年に東京都大田区で八百屋を営む女性がボランティアで食事を提供したことが始まりとされています。
現在では、個人や企業、NPO法人など多様な主体が運営し、国や自治体の補助金、民間の助成金、寄付、食品の提供などを活用しながら運営を続けています。
2010年代には、子ども食堂は主に貧困対策として注目されていましたが、次第に高齢者の健康促進や地域の活性化、さらには虐待予防など、幅広い役割を果たすようになってきました。
今回の調査では、子ども食堂の約7割が「年齢や属性による参加制限を設けていない」と回答しており、より多くの人々に開かれた居場所となっていることがうかがえます。
子ども食堂の普及を目指して、地域のつながりを育む場に
NPO法人「むすびえ」は、全国約1万8,000ある小学校区すべてに少なくとも1つの子ども食堂を設置することを目標としています。
現在、公立小学校の校区内に子ども食堂がある割合を示す「充足率」の全国平均は34.66%ですが、自治体の予算や運営主体の広がりの違いにより、都道府県ごとの割合には10~60%台と大きな差があります。
「むすびえ」の理事長である湯浅誠氏は、子ども食堂が多世代の交流拠点として機能していることを指摘し、「人とのつながりが感じにくい社会の中で、リアルなつながりを求めて行動する人や、それを支える人が多くいることは、大きな希望になる」と語りました。
沖縄県の子ども食堂の広がりと「楽しみながら続ける」大切さ
全国で最も子ども食堂の「充足率」が高いのは沖縄県で、約62%に達しています。
2015年の県の調査では、沖縄の子どもの貧困率が全国平均の約2倍にあたる29.9%という結果が示されました。
これを受け、2016年には県が30億円の「子どもの貧困対策推進基金」を創設し、内閣府も10億円を拠出しました。
こうした財源をもとに、各市町村が子ども食堂の立ち上げを支援し、その数は2018年の127カ所から2024年には361カ所へと、約3倍に増加しました。
県の担当者は、「貧困を家庭の責任にするのではなく、社会全体の課題として捉える意識が高まってきた」と述べています。
また、農林水産省は2020年から学校給食向けの政府備蓄米を子ども食堂にも提供するようになり、こども家庭庁や厚生労働省も運営資金などの助成を行っています。
「肩ひじ張らず、楽しみながら続けることが大切かもしれません。いつも目標は70点くらいにしています」と話すのは、東京都豊島区で2013年から月2回「要町あさやけ子ども食堂」を続けている山田和夫さん(76)。
無理をせず、自分自身も楽しむことが、長く続ける秘訣なのかもしれません。
「子ども食堂」を支える思い―孤独から生まれた温かな居場所-
定年退職後、35年間連れ添った妻を亡くし、深い孤独を感じていたときに声をかけられ、自宅で子ども食堂を始めました。
当時はまだ「子ども食堂」という言葉も広く知られておらず、助成金もない中で、すべて自費で運営していました。
現在、食事は中学生まで無料で、同伴者は1食300円。
支援が行き届きにくい「グレーゾーン」の子どもたちも気軽に来られる場になればと考えています。
今では国の助成金に加え、農家やスーパーが食材を提供してくれるなど、多くの支援のもとで運営が続いています。
さらに、高校生から80代まで、幅広い世代のボランティアの支えも欠かせません。
コロナ禍で一時休止を余儀なくされた際に始めた食材配布は、今も継続しています。
高騰する卵や米などを袋にまとめ、約50世帯に届けています。
4歳の娘とともに訪れた40代の母親は、「1日でもご飯の準備を気にしなくていいのは本当に助かる」と話しました。
山田さんは、「子どものために何かしたい、と思う人がたくさんいる。
その気持ちが形となる場だからこそ、ここまで広がったのだと思います」と語ります。