自治体によって差?給食無償化を考える

キッズパーク豆知識

全国の自治体の約3割が、公立小中学校に通う全ての児童・生徒に対し、給食費を無料にしていることが判明しました。給食の在り方について、改めて考える必要があるのかもしれません。
(※2024年6月13日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)

子育て支援と財源のジレンマ、給食無償化の現状と課題

自治体が給食の無償化を進める最大の理由は、コロナ禍による収入減少や物価高騰を背景に、保護者の経済的負担を軽減することです。また、少子化対策や住民の転入促進を目的とするケースも見られます。しかし、特に政令指定都市のような大規模自治体では、財源の確保が大きな課題となっており、取り組みの広がりは限定的です。
たとえば、さいたま市が公立小中学校の給食を無償化する場合、年間約57億2千万円の費用が必要です。同市の担当者は、「この金額を毎年捻出するのは現実的に難しい」と述べています。同様に、札幌市では年間約60億円が必要とされ、市議会では無償化を求める声がある一方で、「学校へのエアコン設置など、他にも重要な子育て支援がある」との指摘もあります。
さらに、近年では選挙公約として給食無償化を掲げたものの、継続性や実現性が課題となるケースも増えつつあります。

公約と現実のはざまで・・・給食無償化を巡る自治体の取り組み

福岡県中間市では、2017年の市長選挙で「小中学校の給食無償化」を公約に掲げた新たな市長が当選しました。しかし、1期目では実現に至らず、2期目の2023年度に「物価高騰が続く中での緊急対応」として一時的に無償化を実施しましたが、2024年度は再び見送る結果となりました。市の説明によると、「さまざまな分野を比較・検討した結果、実施は困難だった」とのことです。
また、滋賀県湖南市でも2020年の市長選挙で給食無償化を公約に掲げた市長が当選しました。同市では中学校の給食を2023年度から無償化しましたが、小学校については、任期が残り4カ月程度となる中での実現は難しい状況にあると見られています。

給食無償化の課題とは?財源と優先順位をめぐる国の現状

国が給食を無償化することには、依然として高いハードルがあります。文部科学省の試算によれば、全国の公立小中学校で給食を無償化するためには、年間約5,000億円が必要とされており、これは文科省の一般会計予算のおよそ1割に相当します。
また、文科省は公立学校教員の給与引き上げを目指しており、その費用は国費ベースで年間少なくとも約1,150億円が必要と見込まれています。このような状況では、給食無償化の財源を文科省の予算内から捻出することは困難です。同省のある幹部は「給食無償化に充てる予算があれば、教員の給与を上げることができる」と率直な見解を述べています。

子どもの権利と平等を考える。給食無償化の意義と課題

学校給食の問題に詳しい跡見学園女子大学の鳫(がん)咲子教授は、「重要なのは子どもの権利を重視する視点です」と述べています。経済的に困難な家庭に対しては、生活保護や就学援助を通じて給食費が補助されていますが、差別や偏見を恐れて申請を控える家庭も少なくありません。
また、給食費の未納や滞納が発生した場合、それを教職員が補填したり、他の児童生徒からの徴収分で賄っている学校もあります。こうした状況に対し、「どの家庭環境で育った子どもであっても、安心して昼食を取れる環境を保障することが求められます」と教授は指摘します。無償化は、子どもへの直接的な支援が可能になるという点で「優先度が高い」と評価されています。
さらに、鳫教授は「自治体間で不平等が生じないよう、国と自治体が連携してこの課題に取り組むべきです」と強調しています。

地域差が広がる給食費、都道府県間で最大1800円の違い

文部科学省は12日、2023年度の公立学校における学校給食費(材料費)の全国平均額を発表しました。前回の2021年度調査と比較して、小学校・中学校ともに4%以上の値上がりが見られました。また、都道府県ごとの平均額においても大きな差があり、中学校では最も高い県と最も低い県の間で約1,800円の開きが確認されました。
具体的には、全国平均月額は小学校で4,688円(2021年度は4,477円)、中学校で5,367円(同5,121円)となり、それぞれ4.7%、4.8%の上昇となりました。この調査は食材費相当分を対象としており、自治体が値上がり分を補助し、保護者の実際の負担額を据え置いているケースもあるため、保護者が負担する金額とは必ずしも一致しないとのことです。

給食費の10年変化、都道府県ごとに広がる価格差

給食費は物価の高騰などを背景に上昇を続けており、2013年度と比較すると、2023年度には小学校で13%(523円)、中学校で12%(596円)の増加が見られました。
値上がり幅には都道府県ごとで差があり、この10年間で最も値上げ幅が小さかったのは小学校では滋賀県の190円、一方で最も大きかったのは鹿児島県の991円で、その差は約800円に及びます。中学校では香川県と鹿児島県の間で約1,200円の差が生じています。こうした違いは、各地域での食材調達にかかる費用が異なることが主な理由とされています。
2023年度の調査によると、給食費の平均月額は、小学校では福島県が最も高く5,314円、滋賀県が最も低く3,933円で、その差は1,381円でした。中学校では富山県が6,282円で最も高く、滋賀県が4,493円で最も低く、その差は1,789円となっています。

参考(※朝日新聞調べ)完全給食(おかず、主食、牛乳の給食)実施校の割合

【小学校】
公立 99.5%
国立 98.5%
私立 43.4%
【中学校】
公立 97,1%
国立 20.6%
私立 8.2%